今、1966年に放送されたウルトラQの第11話「バルンガ」を思い出している。
バルンガとは、あらゆるエネルギーを吸収し、成長し続ける風船怪獣である。
私はウルトラQをリアルタイムで視聴していたわけではないが、ウルトラシリーズについて書かれた本でバルンガを知っていた。
子ども心に衝撃を受けた記憶があり、その感覚が今になってよみがえってきたのだ。
おそらく今の世界が直面しているコロナパンデミックが、古い記憶を呼び覚ましているのだと思う。
ついこの前まで際限なく膨張し続けるかと思われていた、グローバルな資本主義経済。
欲望の渦はあらゆるものを吸い込み、際限なく膨張を続けていくかと思われた。
私たちは荒れ狂う大きな渦に逆らうこともできず、やがて私たちもその中心へと巻き込まれていくしかないのだと、そんな風に感じてもいた。
そこに忽然と出現したコロナパンデミック。
今、コロナは巨大な欲望の渦からエネルギーを吸い取っているようにも思える。
なんだか少し意外である。
今までの私は、グローバル経済がバルンガだと思っていた。
だが今は、むしろコロナの方がバルンガのようにも見えてくる。
ウルトラQのバルンガは、飛行機や自動車の燃料や電気等のあらゆるエネルギーを吸収し、際限なく巨大化する。
軍のミサイルはおろか台風など自然エネルギーさえも吸収し、挙句には病院の緊急自家発電まで吸収するようになる。
他の怪獣と違い直接的な破壊行為は起こさないが、東京上空で成長を続け、その都市機能を著しく低下させていく。
静かに空中に漂うだけのバルンガは、暴れ回る怪獣以上の恐怖を人々に植えつけるのだ。
そこで放たれた奈良丸博士の言葉。
「バルンガは自然現象だ。文明の天敵と言うべきか。こんな静かな朝はまたと無かったじゃないか。この気違いじみた都会も休息を欲している。」
今、私たちにもある種の静寂が訪れている。バルンガほどではなくても、今起きている現象はかなり示唆的である。
この静寂をどう受けとめるべきか。
今、私はそんなことを考えている。
「明日の朝、晴れていたらまず空を見上げてください。そこに輝いているのは、太陽ではなく、バルンガなのかもしれません。」