メンタルのバランスを崩す公務員が後を絶たない。

公務員と言えば、一般に地位と給料が保障され、ホワイトな労働環境のイメージがあり、

「公務員でメンタルを病むような人は、元々ストレスに弱い。」といった受けとめをしている人も少なくない。

だが、

私も27年間公務員として働いてきて、早期退職後にもさまざまな現場を歩いているが、

公務員が働きやすい職場だとはとても思えない。

そこで働き続けるのは本当に大変なことで、

これからの時代のことを考えると、抜本的に改善していく必要があると思っている。

私が公務員になったばかりの頃と今では色んなことが変わっており、一言では括ることができないが、

古くて大きい組織ならではの融通のなさからくる弊害が重くのし掛かっている。

ひたすら前例踏襲することに抵抗のない職員にとっては今も居心地のいい職場かもしれないが、

時代に合わせた組織やサービスのあり方について、少しでも思いを巡らすタイプの職員であれば、

フレキシブルに対応できない組織の中で働き続けることに小さくないストレスを感じている。

歯車の一部としてオートマチックに働くこと自体はけして難しいことではない。

やれと言われたことを、今までと同じやり方でやる。

そのことだけで言えば、

どんなに長時間であっても、できることではある。

だから、その仕事そのものが過酷かと言えば、

「公務員の仕事は民間に比べて楽だ。」と思う人もいるだろう。

だが、現代のニーズに合わせた仕事の仕方を意識するタイプの職員は、

巨大組織の強力な惰性に違和感を抱くことになる。

そして、強い情熱を持ってそこに居続けても、

組織を変えることはほぼ不可能だし、

人生の貴重な時間の大半が、

巨大組織の歯車の一部として埋め尽くされていくことにいずれ悩むことになる。

直面する社会の課題に真摯に向き合い、アイデアの浮かぶタイプの職員から順番に、

矛盾に悩み、苦しみを深めていく。

ここから適応障害を発症する職員がとても多い。

これが今の行政組織の実態である。

彼らは、メンタルが弱いから倒れているのではない。

こうした中、近年は若手公務員の退職が目立つ。

巨大組織の惰性に身を置き続け、

貴重な時間や可能性を奪われてしまうことに意味を見いだせなくなり、

自らの力で挑戦してみたいと考える方が自然である。

こうした若者には、伸び伸びと人生を謳歌してもらいたいが、

一方でこれからの行政組織が心配である。

行政の仕事はこれからも必要なのだ。

しっかりした人がそこにいなければ成り立たないが、

優秀な人材であるほど、そこに留まらない流れになりつつある。

惰性に疑問を抱かないタイプの職員で埋め尽くされた組織は、

変化の速度と複雑さを増していく社会において、まともに機能できるだろうか。

寄生虫のような職員も少なからず存在している。

簡単な仕事しかせず、

面倒なことは他の職員に押しつける。

面倒なことも結局は誰かがやらねばならないのであり、

自ずと、目配り気配りができて一生懸命な職員に仕事が集まる。

こうして能力が高く一生懸命な職員から順番に、

一人、二人とストレスと過労で倒れていく。

こうした光景を繰り返し目の当たりにすれば、

若手が抜けていくのは当たり前だし、

一人一人の人生を大切にするという意味では、

早く出ていった方がいいとさえ思う。

だが、行政組織には人材が必要なのだ。

公務員の職場にこそ、メスを入れる必要がある。

公務員は憲法を遵守する立場であることを忘れてはならない。

公務員は社会の犠牲になるのではなく、

一人の国民として、

自らの自由と権利をしっかりと行使し、

持続性のある働き方を体現していかなければ、この国の未来はない。

公務員が国民の犠牲になってはいけない。

犠牲を作るような社会は立ち行かない。