岩見沢は真冬。今回の勉強会は冬にまつわる話。

☆冬のことを「マタ」と言う

「マタ」のアクセントは後ろにあり、「タ」を強めに発音する。「冬が来る(来た)。」は「マタ エㇰ」(マタ=冬、エㇰ=来る(来た))と言う。

季節、年の概念

春は「パイカㇻ」、夏は「サㇰ」、秋は「チュㇰ」、冬を「マタ」と言う。

「年」のことを一般に「パ」と言い、「今年」のことを「タンパ」(タン=今、パ=年)と言うが、

アイヌ民族の古くからの言い伝えには、「サㇰパ」(サㇰ=夏、パ=年)、「マタパ」(マタ=冬、パ=年)のように、一つの夏だけで1年、一つの冬だけで1年、といった表現がよくみられる。

春と秋はサㇰ(夏)とマタ(冬)をつなぐ一過性の期間として考えられているところがあり、その解釈には注意を要する。

☆イオマンテの精神

真冬のことを「マタノㇱキ」(マタ=冬、ノㇱキ=真ん中)、越冬することを「マタリヤ」(マタ=冬、リヤ=(冬を)越える)と言う。

一冬越した子熊のことを「リヤㇷ゚」(リヤ=(冬を)越した、ㇷ゚=もの)などと呼ぶ。この言い方は「イオマンテ」(イ=それ、オマン=行く、テ=~させる)と切っても切れない。

アイヌ民族は冬眠から明ける少し前の「キムンカムイ」(熊)を狩るが、そこにヘペレ(子熊)がいた場合、ヘペレを家族同然、あるいはそれ以上に大切に育てる。

ヘペレがコタン(村)で越冬して成長したら、丁重に、あらん限りのご馳走や供物とともに「カムイモシㇼ」(カムイ=神、モシリ=国)に送り返す。

この儀式「カムイノミ」(カムイ=神、ノミ=祈り)がイオマンテであり、イオマンテを控えたヘペレのことを「リヤㇷ゚」と呼んだと考えられる。

☆「寒い」を表現する言葉

寒いことを「メアン」(メ=寒さ、アン=ある)と言う。「今日は寒い。」は「タント シリ メアン」(タント=今日、シㇼ=様子、メアン=寒い)。

真冬になり本格的に寒くなると、「タㇱコㇿアン」(タㇱコㇿ=寒波、アン=ある)とも言う。

「寒さにやられる」といったニュアンスで「メライケ」(メ=寒さ、ライケ=殺す)という表現もよく使われる。「私は寒い」は「ク メライケ」(ク=私、メ=寒さ、ライケ=殺す)。

☆雪と氷の話

「雪」のことを「ウパㇱ」(ウ=お互いに、パㇱ=走る)と言う。

雪が降っている時に空を見上げると、雪がお互いに追いかけっこをして舞い降りてくるように見えることから、このような表現になっていると言われている。

「雪が積もる」ことを「ウパㇱポロ」(ウパㇱ=雪、ポロ=増える)、ドカ雪、大雪のことを「ポロウパㇱ」(ポロ=大きい、ウパㇱ=雪)と言う。

「ポロ」は基本的に「大きい」、「多くなる」という意味だが、語順によって意味合いが微妙に変化することに注意。

「雪かき」は「ウパㇱケ」(ウパㇱ=雪、ケ=削る)、「雪崩(なだれ)」は「ウパㇱホルッケ」(ウパㇱ=雪、ホルッケ=崩れる)、「雪虫」は「ウパㇱキキㇼ」(ウパㇱ=雪、キキㇼ=虫)。

「吹雪」のことを「ウプン」と言う。旭川に雨紛(うぶん)という地名があるが、よく吹雪くために付けられた地名との説がある。

「氷」を「コンル」(コン→コㇿ=持つ、ル=溶ける)と言う。「いずれ溶ける(もの)」の意。「氷柱(つらら)」は「ノキペコンル」(ノキ=軒、ペ=雫、コンル=氷)。

路面がツルツルになると滑って転びやすくなるが「転ぶ」ことを「ハチㇼ」と言う。「今、私は転んだ。」は「タネ ク ハチㇼ」(タネ=今、ク=私、ハチㇼ=転ぶ)。

☆その他参考

・「今年」が「タンパ」(タン=今、パ=年)なら、「今日」は「タント」(タン=今、ト=日)。

・「ノㇱキ」は色んな場面で使える。海の真ん中⇒「アト゜イノㇱキ」(アト゜イ=海、ノㇱキ=真ん中)、真昼⇒「トカプノㇱキ」(トカㇷ゚=昼、ノㇱキ=真ん中)、真夜中⇒「アンノㇱキ」(アン=ある、ノシキ=真ん中)など。

・「シㇼ」もよく使われ、基本的に「様子」の意。有名なのは「今日は良い天気」の「タント シㇼ ピリカ」(タント=今日、シㇼ=様子、ピリカ=良い)。「シㇼメアン」(シㇼ=様子、メアン=寒い)の反対語は「シㇼポㇷ゚ケ」(シㇼ=様子、ポㇷ゚ケ=暖かい)。「夜が明ける」は「シㇼペケレ」(シㇼ=様子、ペケレ=明るい)。