岸田首相の所信表明演説。

第一印象は、

「総選挙を乗り越えるまでの狸」といった感じ。

岸田首相誕生までの道程はけして平坦ではなかった。

支持率が地に落ちていた菅政権では総選挙を戦えないということで、

国民の間では河野氏や高市氏への期待が高まっていた中での総裁選。

今回も自民ならではのパワーバランスが複雑に機能し、最後は決選投票で岸田氏が選ばれたが、

相当な紆余曲折があったに違いない。

国内には失望感が広がり、市場では株価が大幅に下落しているが、

大変ではあったが、

私はこの結果は順当だと思っている。

何故、岸田氏が選ばれたか。

野党から見て、岸田氏が一番やりずらいからだと思っている。

自民党は、当面の選挙を戦う上で総合的に最適と思われる「顔」を選んだのだ。

岸田氏は自民党の中でもリベラル色が強い政治家として国民にも広く認識されており、

野党としては政策的に叩けるポイントが少ない。

案の定、岸田氏は「多様性を認め合う社会」、「分配なくして成長なし」などと掲げ、

すでに左派の不満を吸収するような効果が見え始めている。

菅政権までの自民のやり方に業を煮やし、

「次は絶対に野党に投票する。」と考えていた人の中にも、

「岸田首相のこの政策なら自民でもいいや。」と思う人が出始めている。

このままいくと、今回も自民が勝つだろう。

そして、選挙を乗り越えてしまえば、

今までと何も変わらない自民党による政権運営が続く。

岸田首相は党内の複雑なパワーバランスの中でその座についたのであり、

岸田氏個人の力はそれほど強いものではない。

力説している「分配」も口先だけだと思う。

岸田氏に言わせるのが一番効果的で、リベラル層をごまかせそうだから、

自民党が当面の選挙の顔として岸田氏を立てたのだと解釈している。

所信表明演説(全文)を読んで、上手な狸だと思った。

見方、切り口は色々あるが、だいたいこんな感じで今の岸田首相を眺めている。