今日は60分の枠をいただき、アイヌ語地名について話してきた。
よく使われる表現と事例を列挙。
〇 アイヌモシㇼ
(アイヌ民族にとっての)北海道。アイヌ=人間 モ=静かなる、穏やかな シㇼ=大地。
※元々「アイノ」と発音されていたが、漢字を当てた時に「愛奴(アイヌ)」とされたとの説あり。
※「アイノ」は、本来「人間」を指し、民族を限定しない。
〇 ペッ、ナイ(川、沢)
- 当別(ト=沼 ペッ=川)
- 芦別(アㇱ=立つ、灌木 ペッ=川)
- 秩父別(チ=我ら クㇱ=通る ペッ=川)
- 士別、標津(シ=大きい ペッ=川)
- 幌別(ホロ=大きい ペッ=川)
- 幾春別(イ=それ クㇱ=通る、越える ウン=ある ペッ=川)
- 納内(オ=お尻、川尻 サㇽ=ヨシ原 ウン=ある ナイ=川)
- 歌志内(オタ=砂 ウㇱ=ある ナイ=川)
- 於札内(オ=お尻、川尻 サッ=乾く ナイ=川)
- 苫小牧(ト=沼、湖 マㇰ=奥 オマ=入る ナイ=川)
〇 ソ(滝)
- 空知(ソ=滝 ラㇷ゚チ=落ちる所)
- 壮瞥(ソ=滝 ペッ=川)
- 添牛内(ソ=滝 ウㇱ=ある ナイ=川)
〇 ピㇻ(崖)
- 平取(ピㇻ=崖 ウトゥル=間)
- 古平(フレ=赤い ピㇻ=崖)
- 平岸(ピㇻ=崖 ケㇱ=端)
〇 ル(道)
- 留寿都(ル=道 スッ=根元)
- 留辺蘂(ル=道 ペㇱ=辿る ペッ=川)
〇 サㇽ(湿地、ヨシの生えている所)
- 去場(サㇽ=湿地 パ=頭)
- 猿払(サㇽ=ヨシ原 フッ=口、河口)
- サロベツ(サㇽ=ヨシ原 ペッ=川)
- サロマ(サㇽ=湿地 オマ=入る)
〇 ト(湖、沼)
- 濤沸(ト=湖 フッ=口)
- 当別(ト=湖、沼 ペッ=川)
- 洞爺(ト=湖 ヤ=岸)
- 常呂(ト=湖 コㇿ=持つ ペッ=川)
- 苫小牧(ト=湖、沼 マㇰ=奥 オマ=入る
- ナイ=川)
- 長沼(タンネ=長い ト=沼)
〇 シㇼ(状態、大地)
- 尻別(シㇼ=大地、山 ペッ=川)
- 知床(シㇼ=大地 エトㇰ=出っ張った所、岬)
〇 ポロ(大きい、多い)
- ポロト湖(ポロ=大きい ト=湖)
- 幌内(ポロ=大きい ナイ=川、沢)
- 幌向(ポロ=大きい モイ=曲がっていてゆっくり流れている、湾、澱み)
〇 ポン(小さい、少ない)
- 本別(ポン=小さい ペッ=川)
- 奔別(ポン=小さい ペッ=川)
※「ポロ」と「ポン」は相対的な概念。例:ポロト湖とポント湖,
- ポロウパㇱ(ポロ=多い ウパㇱ=雪)
- ポンヘカチ(ポン=小さい ヘカチ=子ども)
〇 サッ(乾いた)
- 札幌(サッ=乾いた ポロ=大きい ペッ=川)
- 札比内(サッ=乾いた ピ=小石 ナイ=川)
- 札弦(サッ=乾いた ル=道)
- サッチェㇷ゚(サッ=乾いた ㇷ゚=魚 ⇒干し鮭)。
ちなみに、今日9月18日は「アイヌ神謡集」の著者である知里幸恵さんの命日。知里真志保さんは幸恵さんの弟。
以前、本で、川のことをナイとベツ、2つあるのはどちらかが暴れる川でもう一つがそうでない川だと読んだ気がしますが、あってますか? だから、アイヌの人は名前で危ない川かそうでないかがわかるって。
どちからと言うと、ペッと方が大きい川とされています。石狩川のような大きい川のことをシペッと言いますが、シナイとは言いません。ナイは樺太(サハリン)でよく使われるとか、歩いて渡れるような川と言われることがあります。
ちなみに、危険だとか悪いと言う意味の「ウエン」のついたウエンペッと呼ばれる川があちこちにあります。当て字で雨煙別などと表記されてます。