私は5/12にPCR検査を実施し、翌13日に陽性が判明。5/15から5/24までの10日間、病院のコロナ病棟で過ごしていた。

「新型コロナウィルスに感染」という、ある意味貴重な体験を書き留めておきたいと思う。

2021/05/06 喉がムズムズする

最初に小さな「異変」を感じたのは、5/6の昼過ぎ。

異変と言ってもどこか具合が悪くなったわけではない。なんとなく喉がムズムズしただけ。

中国からかなりの黄砂が飛んできていて、晴れていてもなんとなく空がどんよりしていた。

「黄砂のせいで喉の調子が悪い。」

今もそう思っているのだが、もしかしたらこの時すでに新型コロナに感染していたのかもしれない。

2021/05/07 少し頭痛が…

喉のムズムズを気にしていたら、5/7には時々頭痛を感じるようになっていた。

激痛ではないのだが、頭がパン!と張りつめた感じ。

ムズムズする喉をすっきりさせたくて、いつもより水を多めに飲んでいた。

数年前、真夏に水を飲み過ぎて調子を崩した時と感じが似ている。

あまり知られていないが、水中毒という病気もある。

はっきりと具合が悪いわけではないのだが、なんとなく調子が悪い。

2021/05/08〜10 午後になると発熱

5/8からは頭痛だけでなく昼過ぎから微熱を感じるようになる。

日中は普通に元気なのだが、夕方以降の調子が悪く、早めに寝るようになった。5/9、5/10と夜には少し高めの熱が出た。

高い時で38.4℃。喉のムズムズ感は相変わらずで、たまに軽い咳と頭痛。

2021/05/11 全ての症状が消える

しっかり体を休めたのがよかったのか、5/11の朝に目覚めると憑物が取れたように体がすっきりしている。

ほんの少しだけ喉がムズムズするが、熱も頭痛もない。

ここ数日の不調がなんだったのかわからないが、

家族で買い物に行き、魚釣りに出かける準備を始めていた。

2021/05/12 家族全員に異変!

ところが5/12、異変が起きる。

未明から妻と息子が発熱。

昼になると、私の調子も再びおかしくなる。

喉のムズムズが酷くなり、咳が出始めた。熱を測ると38.7℃。

この時点で初めてコロナを疑う。

厚生労働省の相談センターに電話をし、PCR検査を受けることを勧められる。

岩見沢市内の某病院に前もって電話し、家族3人一斉にPCR検査を受けた。

2021/05/13 PCR検査で陽性判明

5/13の朝9時前に病院から電話がかかってきて、「家族全員、3人とも陽性。」とのこと。

やっぱりかという感じで、聞かされてもさして驚きはないが、なんとも言えない不安に包まれる。

ほどなくして保健所からも連絡が入り、あらためて経過を聞かれる。

5月に入ってからもどこにも行っていないし、誰とも会ってもいない。

必要に迫られて食品などを買物したのと、たまに近所で外食したことくらいしか思い当たることがない。

どこからウィルスが持ち込まれたか皆目見当がつかない。

発症日をどう割り出しているのかわからないが、

保健所担当の話によると、

私の発症日は最初に頭痛を感じた5/7となるらしい。

妻と息子は発熱のあった5/12。

はっきりしないが、私がウイルスを持ち込んで家族にうつしてしまった可能性がある。

そう、

私は自分がコロナだとはまったく思っていなかった。

はっきりしたことはわからないが、

自身の認識の甘さに愕然となる。

今は発熱と少し咳が出るくらいだが、いつ急変するかわからない。

自分だけでなく、妻と息子のことも心配である。

保健所の指示で、当面、家族全員自宅療養となった。

腹をくくり、長期戦を覚悟する。

夕方からは味覚嗅覚に違和感を覚え始めた。

味はするが、甘みやしょっぱさが少し薄くなり、やけに苦味が強調されるような感じがする。

嗅覚も鈍くなっている。

2021.05.14 自宅療養中の不安

自宅療養中は細かなことまでも気になってくる。外出できず時間もあるので、あらためて新型コロナについて色々と調べていた。

自宅療養中に家族の容態が急変したらどうしたら良いのか。大事に至る前に変化を早めに察知することはできないものか。

新型コロナが怖いのは、

患者本人にあまり自覚がないままに肺炎が進行してしまうことにある。

普通の風邪と同じような軽い症状を甘くみているうちに、突然重症化してしまう例がいくつも報告されている。

血中酸素飽和度を測定するパルスオキシメーターという機械が有効のようだ。

ネット購入を試みるが、今は品薄で到着までに数日かかりそうである。

保健所に相談してみたらすぐに貸してくれるとのこと。少しホッとした。

2021.05.15 私だけ入院

5/15の昼過ぎにパルスオキシメーターが自宅に届いたので、さっそく使ってみる。

これがパルスオキシメーター。人差し指を挟んで血中酸素飽和度を測定する。

妻と息子は正常値(96以上)だが、私だけは基準値未満。

何度測り直しても93~94にしかならない。

今のところ強い息苦しさは感じていないが咳が出る。「正常ではない。」という感覚はある。

保健所に測定値を報告すると、30分後に折り返し連絡が入った。

年齢、基礎疾患の有無、血中酸素飽和度の値などから、

私だけ医療機関に入院し、必要に応じて治療を受けることが適当と考えているとのこと。

地域のコロナ病床は逼迫しているが、たまたま空きが出てきたらしく、

すぐに入院することを勧められた。

荷物をまとめ、妻の運転で16:00に某病院へ。

検査結果を知らされないまま、薬剤投与

病院に着くと、すぐに体温、血中酸素飽和度を測定し、CTとレントゲンを撮影。採血と採尿もした。

その後、病棟に案内される。

予想していたことであるが、コロナ病床はどこもかしこもビニールシートだらけ。

持ち込んだ荷物もいつの間にかビニール袋でグルグル巻きにされている。

古い建物ということもあり、なんとなく暗く重たい雰囲気。

病室に入ると、薬剤使用の同意書が目に飛び込んできた。

どうやら私の治療方針はもう決まっているらしい。

「レムデシビル」と書かれている。

正直、衝撃を受けた。

レムデシビルについては、私もニュースで何度か見たり聞いたりしたことがある。

コロナに対して有効な治療法が確立しない中、2020年11月には米国だけでなく日本でも治療薬として使用できるようになった薬剤だが、

WHOはその効果に疑問があるとして「使用を推奨しない。」という公式コメントを出していた。

また私の記憶では、

レムデシビルは人工呼吸器をつけるなど重症患者向けの治療薬とされていたはずだ。

私は胸に多少の違和感こそあるが、現時点で呼吸困難になっているわけではない。

このタイミングでレムデシビルを投与されるとは、いったい今の私の体はどうなっているのだろうか。

レムデシビルの文字を見た瞬間、

そんな不安を覚えた。

だが私はコロナ治療の専門家ではない。

レムデシビルによる治療が決まっているということは、

CTや採血、採尿の検査結果により、それ相当の必要性があるということなのだろう。

まず医師の説明を聞こうと思っていたのだが、

どうやらなんの説明もなく薬剤の投与が始まる流れになっているようである。

私はこのままでは気持ちの整理がつかないので、まず医師の説明を受けたいと看護師にお願いした。

19:00過ぎに担当医師から私の携帯に電話がかかってきた。

検査結果を総合的に判定した結果、今の私は「中等症」に該当し、早期の治療が望ましいとのこと。

まあ、そういうことなのだろうが、

私としては肺炎の進行の具合や、今後どのような心配があるのかなどについて最低限の説明が欲しいと思っているわけだ。

レムデシビルを使うのであれば、その副反応などについても事前に覚悟しておかねばならない。

だが、

電話でのやりとりということもあって、

なんとなく医師と心が通わない状況に私は焦りを覚えていた。

どうも担当医師からは「面倒くさい患者」というイメージを持たれているようである。

「医師も看護師もとても忙しい。」

「他にも治療を必要としている患者が大勢いる。」

「治療を拒否するなら、今後容態がどうなってもあなたには薬剤を使えなくなる。」

このようなことを立て続けに言われ、胸が苦しくなった。

ただ、少し頭を冷やして一言だけ話すことができた。

「今の私の状況で、レムデシビルを使わないと言う選択肢はあるでしょうか。」

担当医師は、「それはある。」と言った。

私は「一晩考えたい。」と伝え、翌朝まで時間をもらった。

だが、電話を切った瞬間、私の気持ちは固まっていた。

そもそもどんな状況であれ、薬剤で病気の治療などできないのだ。

どんな病気も自己治癒力でしか治せない。

思い込みかもしれないが、

この時の私はなんとなく体に力が漲ってきていて、

事実、入院してからのパルスオキシメーターの値は96を超えていた。

コロナウィルスによる肺炎が多少あったかもしれないが、5/15の昼を境に私の体力の方がコロナウィルスに勝ち始めているような感覚があった。

私の勝手な感覚でしかないのだが、薬剤の力を借りずとも自力でウィルスに勝てるような気がしていた。

少なくともこのタイミングで薬剤を体内に取り込み、副反応のリスクを負う必要があるとは思えなかった。

もちろん、容態が急変して重症化する可能性はゼロではない。

だが、その時はその時だと思った。

レムデシビルを使っていれば重症化を防げるものでもないと、、

そう思った。

いずれにしても、私は担当医師からいまだ現状の説明を受けていない。

検査はしたが、本当にしっかりした分析ができているのだろうか。

そうした不信感が私の中から拭えない状況にあった。

医師の態度や病院のやり方に抗議したいのではない。

医療現場は本当に大変なのだ。

だが、私は自分の体を守らなければならない。

私の直感でしかないが、

この時の私にはレムデシビルの投与は必要ないと思った。

自分の中で覚悟が決まった感じがして、なんだかすっきりした。

不安を抱えつつも、納得し、ぐっすり眠りについた。

2021.05.16 薬剤による治療はしないことに

私は元々早起きな質なので目覚めてはいたが、早朝に看護師からいきなり大きな声をかけられる。

「治療しますか。それともしませんか。」

なんとなく乱暴で冷たい言い方だと思ったが、私の気持ちに迷いはない。

「調子がいいので、このまま様子をみたいと思います。」

看護師は言葉もなく、すぐに踵を返し部屋から出ていった。

あの時のホッとした気持ちは今もよく覚えている。

朝食は味噌汁の風味だけ微かに感じるが、ほとんど味がしない。体温37.0℃、血中酸素飽和度96。

昼食も味がしない。昼過ぎに37.5℃の微熱。酸素97。

夕食に少しだけ味覚が戻る。肉団子が美味しいと思った。

2021/05/17 味覚が戻り出す

すっきりした朝。体温37.2℃、酸素96だが、咳が少し出る。

朝食からはっきり味覚が戻っている。度合いで言うと70%。

昼食はさらに味覚が戻る。80%。

昼過ぎから軽い腹痛と37.5〜38.0℃の発熱あり。

夕食の味覚はさらに戻る。90%。

20:00に回診があり、初めて担当医師と対面する。

短時間ではあったが、互いに目を合わせることによってわだかまりが解けた感じ。

ホッとする。

それにしても、1日に数回トイレに行くだけで病室から出ることもなく、運動不足でストレスがたまっている。

23:45に体温38.5℃。この熱は腹痛のせいだろうか。

看護師に氷まくらを頼むが、何故か廊下まで出てくるよう指示される。嫌がらせっぽいなと思った。

2021/05/18 不安を紛らわすようにして病室で踊る

一応は眠れた。朝6:00で37.6℃、酸素96。

朝食はおなかの調子が悪く食欲があまりない。味覚も少し落ちた感じ。

じっとしていられなく、

YouTubeで80年代のディスコミュージックを聴きながら少し控えめに踊る。

私の他に同室者が2人いるが厚いカーテンで仕切られており、

膝を柔らかく使い、リズムに合わせて体を揺らすくらいなら問題ないだろう。

微熱と腹痛を紛らわすようにしてひたすら踊る。

この時以降、

朝も昼も退屈を感じたら踊るようになった。

ちょうど重症化リスクのある時期だったが、

踊ることによって余計なことを考え過ぎずに乗り切ることができた。

13:00に自分で洗髪。一瞬だがシャンプーのにおいがした。

13:30回診。腹痛以外は順調であることを確認。

16:30入院直後から装着していた心電図が外される。

この辺りから看護師さんたちが優しくなる。

夕食は腹痛で食べられない。体温37.7℃、酸素96。

夜中も発熱があったと思うが、眠れそうなのでそのまま寝た。

2021/05/19 腹痛がピークに

いつもどおり4:00に目覚める。すっきり感があるが、体温38.5℃、酸素96。

おなかが動いておらず、朝食を食べることができない。味覚は80%。

昼食も食欲がないがバナナを半分だけ食べた。

腹部の右下辺りが痛い。

17:30回診。体温37.6℃、酸素96。おなかが動いていないことを確認。ビオフェルミンが処方される。

夕食は少し食べる。嗅覚も戻ってきている。

腹痛と発熱で20:30頃には寝てしまう。

2021.05.20 全ての症状が消失

昨夜から飲み始めた整腸薬が効いている感じ。朝6:00の体温36.5℃、酸素97。

久しぶりに便が出た。少し血が混じっていたが心配いらないとのこと。

調子がよくなり、朝食をほぼ完食。味覚嗅覚もほぼ全戻り。

昼食も完食。嗅覚は少し落ちた感じ。

夕食は米以外完食。嗅覚には波があるように感じる。

21:30就寝。

2021/05/21 もうどこも悪くない 

日の出とともに目覚める。調子がいい。たまに咳があるにはあるが、どこにも不調を感じない。

体温36.1℃、酸素97。

朝食を完食するが、嗅覚が少し弱い。

昼食は米以外完食。やはり嗅覚弱め。

昼を過ぎても体温は上がらない。調子がいいので踊りまくり、夕食完食。

20:30早めの就寝。

2021/05/22 早く退院したい

日の出とともに目覚める。体温35.6℃、酸素96。

朝食、昼食、夕食すべて米以外完食。嗅覚80%。

やはり昼を過ぎても体温は上がらない。

朝から夕方まで踊りまくったせいで、ぐっすり眠る。

2021/05/23 退院基準を知りたい

昨日同様1日を通して体温、酸素異常なし。

症状が消失してから72時間以上経過している。

嗅覚には多少波があるが、味覚はほぼ正常で食欲もある。

持ち込んでいたノートパソコンでこっそり仕事をした。

明日は月曜日。回診の後には退院できるはず。

2021/05/24 やっと退院

やはりどこにも異常を感じないが、

なかなか回診が始まらず、ひたすら待ち続ける。

昼食後に回診。15:00退院。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

妻が迎えに来てくれて颯爽と車に乗り込む。10日ぶりの外の空気がとても美味しい。

5/19の夕方以降、なんの症状も出ていないが、

退院後も4週間は体温をチェックするように指示された。

多少体力が落ちていて、まだ嗅覚が完全ではないが、ディスコミュージックで踊りまくっていたのが良かったと思っている。

結果的に深刻な症状が出ることもなく退院することができたが、

腹痛、咳、発熱、味覚嗅覚障害などを断続的に繰り返していた。

発症から7〜10日目辺りまでは容態が急変する可能性もあり、非常に不安であった。

保健所や医療機関の現状、実態を肌で感じることもできたので、

乗り越えることができた今は、貴重な体験ができたと思っている。