最近、ヤングケアラーの問題が取り上げられることが増えてきた。

ヤングケアラーとは、

日常的に家事や家族の世話をしている18歳未満の子どものことを指す。

今の中高生の約5%が、家庭の中で高齢者や障がい者、幼い子どもの世話などに追われているという。

ここに注目が集まるようになったのは比較的最近のことである。

ヤングケアラーの問題については、今後、広く社会的に認知されていくことになると思う。

私が数年前に児童相談所に勤務していた時に感じていたのは、

躾と称し、子どもに家事を押しつけているネグレクト(育児放棄)家庭が非常に多いということである。

これらをもカウントしていくと、ヤングケアラーの数はさらに数倍に跳ね上がるだろう。

特に目立つのは、貧困による家庭の崩壊。

自暴自棄になり、家事をしない親は見た目以上に多い。

彼らは子どもに八つ当たりするだけでなく、躾と称して家事を押しつける。

統計上、はっきりした数字は出ていないが、

ネグレクト家庭における事実上のヤングケアラーは、高齢者や障がい者の介護によるヤングケアラーよりもはるかに多いはずだ。

虐待を受けている子どもたちは生まれた時からそうした環境におかれているため、

異常性に気づけないまま、家事や介護に追われている。

理不尽に我慢を強いられ、自己肯定感が低く、根っこのところで親の生き方に誇りを持てないため、

健全な人間関係を築くことが難しくなる。

社会性が育たないまま大人になってしまうと、

成人しても年老いた親に支配され続け、同時に親に依存するという状況から抜け出せなくなってしまう。

いわゆる共依存の関係だが、

互いに傷つけ合うような関係なので、常に心が休まらない。

どうしても自暴自棄になりやすく、

新しい家族に恵まれたとしても、自分が幼少期に受けた虐待をつい繰り返してしまう。

一口にネグレクトと言っても、

どこからどこまでが躾でどこからがネグレクトなのかは明確に線を引けるものでもない。

家に居てもなんとなく生きづらいと感じるのなら、

自らの生い立ちを疑ってみることが必要な場合もある。

過去と向き合いたくないと思うかもしれない。

無理はすべきではないが、

生きづらいと感じているということは、何かしらの転機が訪れている可能性がある。

誰かを悪者にするのが目的なのではない。

原因を突き止め、そこと向き合うことによって、よりよい今とこれからを作ることができるかもしれない。

近くにいても傷つけ合うだけなら距離をおいてみるのもいいだろう。

それは自分のためであるのと同時に、相手のためでもある。

共依存の悪循環から抜け出すことが、人生の第一歩になることがある。