今月から2ヶ月限定で、

某医療機関で夜間当直の仕事をしている。

夜間の当直室には私一人ではなく、他に警備担当もいるのだが、

その方とは、警備や電話対応などの仕事の合間にどちらからともなくゆるい話をしたりしている。

彼は私よりも一回り以上年上で、たまたま数回組んだだけなのだが、

会話のキャッチボール感が心地いい。

基本的には、2人で新聞やテレビを眺めていて、なんとはなしに短く感想を呟き合うだけ。

その感じが自然体でいられて、とにかく気持ちが楽なのだ。

こうなってくると、互いに関心を持ちあうようになる。

私は、自分からは自分の話をしない。

彼も、いきなり彼の話を始めたりはしない。

私も彼も話しかけるのは、相手に関心を持った時であり、

話しかけられたら、求められた分だけ相手の関心に沿った話をする。

余計なことはベラベラ喋らない。

ルールがあるわけではないが、彼も私もそうすることが心地よいからそうしている。

関心を持たれたら、こちらも相手に関心を持つ。

だから、何か聞かれて答えたらそれで終わりということはなく、

私も彼への関心が広がり、タイミングを見計らい、私からも彼に話しかける。

当たり前のことだが、彼にも歴史がある。人生の先輩でもある。

まずはそこに敬意を払いたい。

この、双方向に気持ちの通った、温かいキャッチボール感が私は好きだ。

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一方、

前にも書いたが、

私は、こちらが求めてもいない話をベラベラ話す人が苦手である。

勝手に間断なく喋り続ける人には、

こちらから聞きたいことがあってもタイミングがつかめないし、

勘違いされてさらに要らない話を押しつけられることを思うと、話しかける気も失せる。

浴びせられる話が有効な情報であろうとなかろうと、

こちらの都合に関係なく勝手な話を押しつけられるのは迷惑以外の何物でもない。

黙って様子を見ていると、やたらと楽しそうである。

機関銃のように次から次へと喋りまくる自分の姿に酔い、

気が利いていてお喋り上手で明るい性格を気取っているように見える。

決めつけるつもりはない。私にはそう見えるというだけのことである。

だが、

気取っていようがいまいが、

求めてもいない話を際限なく聞かされる。

この事実は動かない。

たまったものではない。非常に苦痛で迷惑である。

求めてもいないものを押しつけられるだけでなく、こちらが聞きたいことも聞けないから、

やたらと長い時間付き合わされる割に、内容がほとんどない。

いちいち言わなくてもいいことを1から100まで並び立て、

回転の速さを自画自賛しているようにも見える様子は滑稽でさえある。

そんなに気が利くなら、他のことにも気がつきそうなものだが、

一極集中の特攻精神、木を見て森を見ず。

聞かされているこちらとしては、聞きながら、同時に大量の疑問が湧いてくるのだが、

口を挟む気にもならない。

当人が自分に酔っているかは知らない。

だが、

自分のしていることが相手にとってどういう意味を持たらすか考える習慣がないという、

想像力の欠如に愕然とし、

その人に向ける言葉が見つからない。

何か話してもこちらの意図に気づかないだろうし、

とんでもない方向に誤解されるイメージしか湧いてこない。

向こうは黙っているこちらを見て、主導権を握っていることに快感を覚えているようだが、

こちらとしてはただただ面倒くさいだけである。

無駄にうるさくて、時間がかかる割に話が前に進まず、疲労感だけが残る。

何度も繰り返されると、それこそ絶望的な気持ちになる。

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人と人とが理解し合うのは、本来難しいことではない。

だが、現実には色んなところに歪みがあって、

スムーズにいかないことも多い。

歪みは恥ずかしいことではない。

私にも歪みがあることを自覚している。

もちろん、自分で気づいていない歪みもあるだろう。

普段からそういうことを考えながら生きている。

考えすぎだとは思っていない。

考えないではいられないことであり、

そうしたものを忘れることができるのか、たまに試すこともあるが、

忘れてしまえば吹っ切れて元気になれるものでもないだろう。

忘れることができないこともある。

私の中にそれがあるということは、何かしらの形で受けとめていくしかない。

そもそも歪みを重荷として認識しているわけではない。

今の自分が素通りできないものとして、どうするもこうするもなく、今はただ眺めている。

自分の中だけなら、いくらジタバタしてもいいと思うが、

こんな世界に誰かを無駄に巻き込んでも仕方がない。

そんな風に考える者同士であれば、理解し合うことは難しいことではないと思う。

時間もやり取りも必要ない。

一瞬でも通じ合えた感触があれば、快感だけが残る。

他に付け加えるべきものは何もない。

楽な気持ちで、安心して自分の道に進むことができる。

私は前に進まなければならない。

向かうべき場所でやらねばならないことがある。

全ての人の幸せを祈りながら、

私は私の道を進む。