児童相談所で勤務していた時に直面した課題の一つとして、自己愛性パーソナリティ障害の問題がある。
親から虐待を受け続け、自己肯定感の低い子どもは、自己を守るために様々な形でバリアを形成することになるが、
自己愛性パーソナリティ障害はそのあらわれの一つであるとも言われている。
誰からも認められていないと思う分、自己陶酔することによってバランスを保とうとするのだが、
根本が傷ついたままでは、
どんなに外壁を塗り固めても、本当の意味で自分に自信を持つことはできない。
自分はダメだと思いながら、自分を好きだと思い込むことには最初から無理がある。
だから、どうしようもない渇望感から、他者からの称賛を求めずにはいられない。
その結果として、
自己陶酔と承認欲求が顕著に表出することになる。
これが典型的なパターンの一つ。
子どものうちはまだいい。
本人が薄々気づいていれば、親から離れるとか、環境の変化をきっかけにそこから抜け出すことも出来る。
抜け出すことが出来れば、むしろ生きていく上での財産になる。
だが、大人になっても抜け出せない場合もある。
本当は本人も気づいているのかもしれない。
だが、根っこの欠乏感が強すぎると、
その欠乏感を直視することをしなくなってしまう。
空っぽのまま、外壁を厚く、高く、きらびやかなものにすることに血眼になる。
可哀想で、とても残念だが、
こうなってしまうとほぼ手がつけられない。
周りにはバレていないと思い込んでいるが、
だいたいはバレてしまっている。
相手をするのは正直面倒くさい。
強烈な承認欲求により、短期的には華やかな生活を手をすることがあるかもしれないが、
どこまでいっても、自信が身につかない。
いつも寂しくて不安。
周りから良く見られることばかり気にしているが、
本当の自分はダメだと言う自己評価は不変なのだから当たり前である。
自分の本当の価値に気づくだけで、自分の中だけで一瞬にして解決できることなのだが、
何十年もそこに触れないで生きてきたので、直視する勇気を持てない。
巨大で強力な外壁を作ることにかける時間が長ければ長いほど、
直視することから遠ざかってしまう。
完璧な外壁を作ることが自分を愛し自信を持つことだと思い込んでしまう。
これでは、どこまで行っても、根っこの寂しさは解消されない。
外壁に囲まれて途方に暮れている根っこの自分。
怖がらずに、ちゃんと見てあげて欲しい。