今日1月11日は鏡開きの日である。
去年までの鏡開きはさほど気にしていなかったが、今年の私はずいぶんと意識している。
思い返してみると、伏線が二つあったように思う。
まず、去年の暮れに家で餅つきをした。10数年ぶりに自分の手で鏡もちを作った。

そして、年が明け神社の初詣で「半凶」という珍しいお神籤を引いてきた。

今、うちの玄関には手作りの小さな鏡もちが置かれている。

朝起きて新聞を取りに行く時、雪かきをするために身繕いをする時、郵便物を取りに行く時、戸締りのため施錠を確認する時など、
この正月は鏡もちに宿る歳神様(としがみさま)を例年以上に意識している。
そう言えば、私が子どもの頃、父が鏡開きのことについてよく話していたことを思い出した。
父はとにかく鏡開きを楽しみにしていた。
「さあ、今日は鏡開きだ。」と言い、家中のもちをかき集め、焼いたり煮込んだりしてくれた。
父がどんなことを話していたかほとんど覚えていないが、あの時の父の熱量は今も私の中に残っている。
鏡もちに神様が宿っているという感覚は、誰に教えられたわけでもなく幼少期から私の中に自然にあった。
今もそういうものだと思っているが、
神様を神の国へ送り帰すという気持ちで鏡開きを迎えたことはなかった。
今はそこのところに、私の中にちょっとしたこだわりがある。
アイヌ民族の熊送りの儀式、イオマンテ(イ₌それ、オマン₌行く、テ₌~させる)と繋がるところがあるようにも感じている。
アイヌ民族にとって、熊はキムンカムイ(キムン₌山、カムイ₌神)。位の高い神とされている。
熊は、私たち人間が生きていくために必要な毛皮や肉を送り届けてくれる神。
神の国から私たちのために人間界に降りてきた非常に尊い神と考えられている。
だから肉や毛皮、内臓までも余すことなく大切に使わせていただくのは当然のことであり、
感謝の気持ちを込めて、また自分たちのところにやって来てもらえるように、
とっておきのごちそうやお酒などを添えて、その魂を神の国に丁重に送り返す。
これがアイヌ民族に伝わる伝統的な熊送りの儀式、イオマンテである。
今の私は、玄関に鎮座している鏡もちを前に、イオマンテと同じような気持ちになっている。
今年も天の恵みに感謝したい。
神の国からたくさんの神々にやって来てもらえるように、
この鏡もちに宿る歳神様をきちんと送りかえしたい。
そして来年の正月も歳神様に来てもらえるよう、自分の手で鏡もちを作りたいと思っている。