私が公務員在職中に疑問に思っていたことの一つに「公務員の職務専念義務」がある。

その主旨に異論はないが、解釈の仕方には色々と思うところがあるので、少し触れておきたい。

◯公務員の職務専念義務とは

公務員の職務専念義務は法に明記されている。

国家公務員法第96条において、「すべて職員は、国民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当っては、全力を挙げてこれに専念しなければならない」とされ、

さらに、

国家公務員法第101条第1項前段で「職員は、法律又は命令の定める場合を除いては、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、政府がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない」とされている。

これらはそれぞれ地方公務員法にも同様の規定がある。

◯そもそもが無理

「その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、政府(地方自治体)がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない」

しごくもっともである。

だが、

本当にこの条文どおりにできるものだろうか。

全力で職務に当たることに異論はないが、職員の集中力を最大化する視点が欠落してはいないか。

人が物事に集中できるのは長くても連続90分と言われているが、公務員の勤務については適宜休憩を取ることについて明確な記載がない。

北海道庁であれば一日の勤務時間は8:45~12:00と13:00~17:30までの合計7時間45分。昼休みとして連続60分の休憩しか認められていない。

マニュアルどおりにきっちり働くのなら、昼休み以外は午前も午後も休みなく働き続けねばならない。

さらに、昼休みに確実に休憩できるならまだしも、実際には来訪者が来たり電話がかかってきたら昼休みの時間でも対応することになる。

ほとんど毎日昼休み返上で仕事をしている部署もあるし、昼食はおろかトイレにいく時間さえ取れないことも少なくない。

このような実態にある部署が少なくないが、これは望ましい在り方なのだろうか。

こんなことで職員は高い集中力を維持できるだろうか。

◯無駄なストレスによる弊害

実際にはトイレに行ける時には行くし、疲れたらパソコンの画面から目を離し、深呼吸してストレッチ運動をすることもある。

だが、法を盾に攻撃してくる外部の目を怖れるあまり、ちょっとした息抜きさえ認めないようなムードが組織に広がっているのも事実である。

これは公務員に限ったことではないが、

このような窮屈な環境では心身の健康を保てない。集中力もモチベーションも低下し、いい仕事もできない。

◯どうあるべきか

民間では積極的に休憩を取り入れ、業績を上げている企業も出ている。

行政のような大きな組織がその体質を変えるのは簡単ではないが、

職員の心身の健康を保ちその能力を引き出すためにも、

社会のあるべき姿を自ら作り出していく意識を持ち、率先して変わっていく必要があるのではないか。

その際、行政組織としても職員個人としても外部の目を怖れすぎないことが求められる。

勤務時間にガチガチに拘束されることなどが公務員の使命なのではない。

もう一度、国家公務員法第96条を引用する。

「すべて職員は、国民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当っては、全力を挙げてこれに専念しなければならない」

職務の遂行こそが公務員の本来の役割である。

職務の遂行のために積極的に休憩を取り入れ、公共の利益に繋げて欲しい。

公務員でない私たちもつまらないことで公務員を監視したり縛り付けるのではなく、

公務員が本来の職務に専念できるよう仕向けることこそが大切であると思う。