関東で働いている娘がバイクで日光に行く計画を立てているらしく、

学生時代にDRで中禅寺湖まで行った時のことを思い出した。

大学2年の秋、紅葉がとても綺麗でいろは坂が渋滞していたのを覚えている。

だがどんなに渋滞していても、すり抜けで進むことができるのがバイクの利点であり、

あの日の私も華厳の滝を目指し、長い車列を縫うようにしてDRを操っていた。

だが、たしかに華厳の滝に行ったのだが滝を見た時の記憶がほとんどない。

あの時の私は、華厳の滝に着く少し前から酷く動揺していた。

こともあろうに、いろは坂で道路脇のU字溝にハマってしまったのだ。

ほとんどのU字溝には蓋がしてあったのだが、ところどころ蓋の無い場所があるので気をつけてはいた。

だが、落ち葉が多くて場所によってはU字溝があること自体わからなくなっていた。

路上の落ち葉を踏みながら走っているつもりでいたら、いきなりドスンと前輪が落ち、後輪も落ちた。

まだバイクに乗り始めて数ヵ月でトラブルの経験のなかった私は頭が真っ白になった。

周りの車からたくさんの視線を感じる。

今しがた颯爽とすり抜けて追い越してきた車が次々と私とDRを追い抜いていく。

ここから抜け出せるか、バイクは壊れていないか、

周囲からの視線が突き刺さってくる。

落ち葉を足で払いのけると、タイヤ幅ぴったりの狭いU字溝が見える。

前輪を引っ張り上げようとするが、どこかが引っかかった感じでうまくいかない。

悪い予感がして一瞬ゾッとしたが、

ほんの少しだけDRを後ろにずらすことによって、引き上げることができた。

DRは車重が軽いのでことなきを得たが、

あの時は酷く焦り、とにかく恥ずかしかった。

だから華厳の滝に着いてからも、U字溝にハマった私を見ていた人が周りにいないかとか、

今ならまったく気にしないことまでずいぶん気にしていた。

そのせいで滝のことはほとんど覚えていない。

若かったなー

と、とても懐かしく思う。

DRはあの時の私のことも忘れていない。

家族よりも友人よりも、私のことをよく知っている。

娘と娘のドラッグスターも同じだろうか。

娘が華厳の滝に行く時にはあの場所を通ることになる。

少し不思議な感じがする。