今、外は急に風が強くなり、時々雨がバラついている。

さっきまで穏やかだったのが嘘のようだ。

私は幼い頃から風を気にする傾向がある。

どちらかと言うとあまりいい印象はなくて、

風は、私の行く手を遮るような働きをしてきたことが多い。

まるで私が今やろうとしていることを考え直させるように、

とことんまで邪魔をしてくるように感じることが多かった。

小学生の頃、ある場所へ行こうとする時にだけ風が強くなることがあった。

じっとしていれば無風なのに、そこに行こうとするとおかしな風が吹く。

その時はなんだか気持ちが悪くなって行くのを止めた。

バイクツーリング中にも怖い思いをした。

何故か空気の密度の薄いところがあちこちにできてきて、

そこに向かってバイクを押し倒すようにして意地悪な風が不規則に叩きつけてくる。

風の強さ自体はそれほどでもないのだが、私との呼吸と言うか、間がおかしい。

必死の思いでバイクを路肩に停め、スタンドを立て両足で踏ん張り、ハンドルを握りしめた状態で数分間じっとこらえた記憶がある。

こんな時、私は必ず風に話しかけている。

私の言葉が伝わっているのかはわからないが、その時感じていることを色々と話している。

たぶん、私の想像力や何かしらの配慮が足りなかったりしていると思うので、

まず自分で考えてみるのだが、それでも風が止まない時には、

「今は考えてもわからないけど、必ず気づいて、やるべきことをやると約束する。」と話すと、風はたいてい収まる。

何か迷いのある時や思い切った決断をした時にも、よく風が吹く。

子どもの頃はただただ怖かったが、

今は「また俺の覚悟を試してるんだな。」と思うようになっている。

今吹いている風もなんとなく心当たりがあるので怖くはない。

気持ちに揺らぎがなければ、風はいずれ収まる。