2019年度に全国の児童相談所が対応した児童虐待相談が193,780件に上ることが発表された。

数字だけ聞いてもピンとこないかもしれないが、

児童相談所における虐待対応はものすごい勢いで増加している。

このグラフは2018年度までの推移を示したものだが、

これは児童虐待の正確な数を示したものではない。

児童虐待に関連した事件事故が次々と報道され社会的な関心が高まったことにより、

警察、保育所、学校、病院などの公的機関に加え、一般市民などからの通報が激増していることを示している。

30年前には1,101件だったのが、

20年前には11,631件、10年前には44,211件と増え続け、

2020年度には確実に20万件を超えてくる。

言うまでもなく、個別の虐待ケースに注力することが大切なのだが、

そもそもこのような状況下で児童相談所は機能できるだろうか。

私は2016年1月から2019年3月まで某児童相談所で勤務していた。

一日に何本も通報が入り、そのたびに臨時の所内会議を行ってきた。

迅速に対応方針を組織決定し、動く必要があるからだ。

本来、虐待対応は児童相談所の業務の一部に過ぎないのだが、

近年はその時間と労力の大半が虐待対応に割かれている。

私たちはここにもっと目を向ける必要がある。

児童相談所が対応した分だけ、順番に問題が解決できているなら良いのだが、

大半の事案は長期にわたり継続的に取り扱っている。

何年経っても一向に解決できない場合も少なくない。

担当者の抱えるケースは雪だるま式に増え続ける一方であり、

すでに、とっくの前にキャパを超えてしまっている。

児童福祉司の増員が叫ばれているが、私は、今の倍の数にできたとしてもまだ足りないと思う。

こうした中、

行政や福祉団体のみならず一般市民の意識が変わらなければ、

いくら児童相談所の機能を強化しても問題の解決には繋がらない。

では具体的にどうしたらいいのか。

正直、私にもわからない。

だが私が現場で感じてきたのは、

格差と貧困が引き金となって虐待の連鎖が起きているという現実である。

私自身は主に地域の抱える問題からアプローチしていきたい。

時間のかかる作業だが、どうしても必要だと思っている。

そこを土台にして、

児童相談所が虐待対応に振り回されることなく、本来の役割を果たしていく姿をイメージしていきたい。