先日ある人との会話の中で、私が公務員を退職したことについての話になった。

「地位と給与が安定的に確保されている公務員を辞めてまでお前がやりたいこととは何か?」などと問われた。

もちろん私にもやりたいことはあるが、取り立てて語るほどたいそうなものではない。日々の生活を楽しみたいだけだ。

そもそも私は公務員の地位や給与がそんなにいいものだとは思っていないので、

何かと何かを天秤にかけるようにして一大決心をしてきたわけじゃない。

公務員の地位とはどういうものか。

仮に社会に階層というものがあるとすれば、公務員は上位層だとでも言うのだろうか。

公務員と言うだけで優越感に浸っている人もいるかもしれないが、江戸時代の士族でもあるまいし、気持ちが悪いだけである。

一般に社会的信用が高いと言われることもあるが、本来そうしたものは組織とは関係がない。

退職後のことを考えても、社会的信用は個々人が獲得すべきものであろう。

給与はどうだろう。

税収が上がらない中、自治体としても徐々に人件費を削るしか方法がなく、公務員の給与も減っていくと考えるのが自然である。

地位も給与もしがみつきたくなるほど上等なものとは思えない。

仮に地位と給与が恵まれているとしても、

組織の歯車として消耗していくだけの毎日が延々と続くことを、どう受けとめるか。

たいていの場合、「このままでいいのか」という問いにぶつかることになるが、この問いにどう反応するかは人それぞれである。

公務員として生きることに一生を捧げる生き方もなくはないが、

組織から離れたところで、自由にその時やりたいと思うことに挑戦したいと考える方が自然であろう。

65歳以降も激動の時代を逞しく生きていくためには、今から様々なスキルを身につけておく必要がある。

その意味でこれからの時代に副業禁止というのは致命的ではないか。

そう考えた私は、

公務員を早期退職しフリーランスとしての道を選んだ。

十分に論理的で筋の通った思考と行動だと思っているが、

今の常識に照らせば、私のとった行動は奇異に映るのかもしれない。

だが、組織から抜け出して挑戦してみたいと考えている人は多い。

これからは実際に行動を始める人も増えてくるはずだ。

公務員が恵まれているという幻想は今も強く息づいているが、

少し考えれば状況が変わっていることに誰でも気づくはずだ。

公務員のことに限らず、今は常識が怪しくなっている。

常識と心中できるのか。泥舟と運命をともにする生き方に悔いはないのか。

自問自答せずにはいられない。

今のような時代は、まず組織や常識から自由になることから始めるべきではないかと私は思っている。