これは、昨日の浦河のパセオンカムイカムイノミで私が着ていた着物である。

エカシからこれを渡されたので何気なく着ていただけなのだが、

すぐに浦河の人が何人か集まってきて、「この着物は素晴らしい」と言われ、写真をたくさん撮られた。

この着物の材料を聞かれたのでたしかめてみると、

やはり本物のアットゥシである。

オヒョウの木の皮を使い、昔ながらの伝統的な手法で作られたものであった。

しかもこのアットゥシを作ったのは、萱野茂さんの奥さんの萱野れい子さんであった。

売り物ではないが、数百万の価値があるのではないか。

そんなことも知らずに、チャランポランな気持ちでこのアットゥシを着ていた自分が恥ずかしくなった。

私はこのアットゥシを着るに相応しい精神をしているだろうか。

今さら自分を卑下しても始まらない。

今の自分にできることを精一杯やろうと心に誓い、強い霊力を帯びているとされる砥石を手に、

パヨカカムイ(歩き回る疫病の神)に向け、全力でエピル(祓い)の舞を舞った。

そして浦河の神々に心を込めて祈ってきた。

祈っているうちに、

萱野れい子さんが作ったものでなくとも、どんな着物であっても同じ気持ちで感謝し、祈らなければならないと思った。

このアットゥシだけでなく、何気なく身に着けているマタンプシ(ハチマキ)、テクンペ(手甲)、ホシ(脚絆)などにも、作り手の思いが込められている。

それらの思いと一つになって私は祈ってきた。

今も時々、あのアットゥシを着ているような感じがしている。