船の時間

昨夜、商船三井フェリーで大洗を出港し苫小牧に向かっている。

今の時計は2020年10月22日(木)AM6:16。三陸沖で朝を迎えた。

今回も最安の雑魚寝大部屋だが、このブロックには私たち夫婦の他に誰もいない。

おかげで自分のいびきを気にすることなく熟睡した。

波があるため多少揺れてはいるが、それもまた心地好い。

昨日まで10日連続で寝袋車中泊だったので、平らに敷かれた布団のありがたみを再認識している。

だがよく眠れた一番の理由は布団の違いなんかではない。

乗船中の17時間45分の間、ネットから隔絶されているのが大きい。

いつでもどこでも、調べたいことなら無限にある。

ネット環境があったら、昨夜もスマホにかじりついていた。

今朝はネットのない時間を新鮮に感じている。

うまく表現できないが、数十年前には当たり前だった懐かしい感覚に浸っている。

船窓から果てしなく広がる海を眺めながら、今回の旅を振り返っている。

旅は非日常であり、普段忘れている感覚を手元に引き寄せることができたりする。

今はこうして、10日間の旅の余韻がまだ私の体の中にあるが、

苫小牧に着いて日常に戻ると、掴みかけていたように感じているものも、あっけなく忘れてしまうのだろう。

旅の感覚と同様に、ネットの無い感覚も今だけかもしれない。

私はバイク乗りなので本州との往来に何度もフェリーを使ってきた。

だから、この感覚は初めてではない。定期的に何度も思い出してきたはずなのだが。

それにしても、時代とともにフェリーもずいぶん変わってきた。

最安の雑魚寝大部屋と言っても、今は全席指定になっている。

船内のどのスペースにも番号が振られていて、好きな場所に勝手に陣地を張ることはできない。

30年くらい前の、私がまだ若い頃には、

似たようなツーリングライダーが雑魚寝部屋の片隅になんとなく集まり、情報交換したりしたものだが、

今は旅人同士が語り合うような雰囲気はほぼなくなっている。

さらに今は、

コロナの影響で受け入れ客数自体が大きく絞り込まれており、バイキング形式のビュッフェレストランもやっていない。

風呂や売店酒の時間帯も限られ、騒ぐ人もいない。

船内は常に静かで何もかもが整然としており、とても清潔で快適である。

昔と比べて管理されすぎで味気ないという人もいるが、

私が船に期待しているのはそんなことではない。

船は、時代の中で形を変えても、

いつも色々なことに気づかせてくれる。

7時間後には苫小牧に着く。西側に下北半島が見える。

11日前の朝、八戸の舘鼻岸壁朝市から今回の旅が始まったことを思い出す。

風呂場が開いたので、これから入る。

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