昨日、弁護士の方と電話で30分ほど話す機会があった。

詳しい中身までは明かせないが、今回は職場におけるパワハラについての話をした。

私自身も公務員として27年間働いてきた。

在職中も本当に様々なことがあったが、正直なことを言うと、パワハラの噂を聞いたことも一度や二度ではなかった。

遠くに近くに、何度も噂を耳にしてきたし、目の前でそれまがいの出来事を目撃してもきた。

正式な手続きを経ていないので認定には至ってないが、実質的にパワハラだろうというケースは山ほどある。

退職した今、冷静に振り返ってみれば私自身を直撃していたこともあった。

当時の私もやはり殺人的に忙しい部署にいた。

忙しいのは私だけではない。みんな余裕がなくギスギスしている。日常的に面倒の押しつけ合いや嫌みが飛び交っている。

そこで降りかかってくるものをまともに受けとめていたら、こちらのメンタルがあっと言う間にやられてしまう。

いちいち立ち止まったり気にしていたら仕事が進まなくなってしまう。

家族のためにも私が倒れるわけにはいかない。

次々と降りかかってくる仕事を高速で処理しなければならない。

無我夢中に働き続けるうちに、いつの間にか私なりに対処する技術を身につけていた。

だがこれは、けして褒められるようなことではない。

自分の心と体をごまかしながら、相当な無理を重ねながら働いてきたのだ。

大げさでなく、普通の感覚でいたらあっという間に精神が崩壊してしまうような労働環境であった。

別に、組織の実態を暴露することによって注目を集めたり、同情を買いたいわけではない。

私たちの社会全体に難しい課題が山積している以上、これからの行政組織をより有効に機能させる必要がある。

現状の行政組織の問題点、課題を社会的に共有し、時代の変化に即した形で組織の体質を変えていかねばならない。

現実に即した形で、社会一般から建設的な意見を引き出す流れを作りたい。

その思いでこうして書いている。

普通の感覚であればあのような場所で働けるわけがなく、むしろ平気でいる方が病気ではないかと、私はそう思っている。

私の所属していた組織は担当者だけでなく管理職の多くも明らかに病んでいた。

上司から部下だけでなく、部下から上司へといった性質のハラスメントも目立つ。

とにかく、認定こそ受けていないが、ハラスメントまがいの行為がそこらじゅうに横行していた。

そんな中、かろうじて自分自身を保つことができても、他人をコントロールすることまではできない。

過酷な環境下で惨めなことが繰り返されていくのを、私自身もなす術もなく見過ごしてきた。

綺麗事を言っても仕方がないだろうと言う気持ちにこの私も支配されていた。

だがこうしている今も、苦しむ職員が大勢いる。

明らかな被害を受け続けていても、組織から抜け出すことができない事情を抱えている場合はほとんどが泣き寝入りになる。

仮に訴えが認められ賠償を勝ち得たとしても、その後、自分を取り囲む職場の空気が変わることを怖れる人がほとんどである。

事実上、そこで働き続けることができなくなってしまうことを怖れ、結局我慢することになる。

これが実態だと思う。

このままでいいわけがない。

在職中は何もできなかったが、今の私は組織の外側にいる。

今だからこそできることがあるかもしれない

そんな思いを抱えながら、弁護士と話をしていた。

電話を切り、花に水をやっていたら、セミが飛んできて私の左手の人差し指にしがみついてきた。

びっくりしたが、私はこのセミを振り払うこともなく受け入れていた。

セミは弱っていて元気がない。よく私の指にしがみつけたと思う。

めちゃめちゃ暑いので日陰の快適そうなところに移動してセミに声をかけてみた。

一瞬、セミから私に何か飛んできたよう気がした。

何だかよくわからないが、私がそれを受けとめていることだけはたしかである。