ウポポイに期待すること

昨日(7/12)、白老町のウポポイが一般公開された。新型コロナの影響で二度にわたり開業が延期されるなど、関係者の苦労は相当なものがあったと思う。

私自身も一人の道民として、北海道の歴史を後世に伝えていく責任と使命を痛切に感じている。

こうしたことは一部の専門家や関係者だけの仕事ではないのだ。

道民としても、誰にとってもけして他人事ではない。誰もが自分自身の問題として歴史と向き合う必要がある。

そして、その姿勢を次の世代に伝えていくべきではないかと思う。

そのためには、歴史を単なる知識として知っているだけではむしろ逆効果であり、この地に生きてきた先人やアイヌ民族の方々に対して失礼だと思っている。

先人が大切にし今に伝えられてきたものの中には、時代に左右されない普遍的な意味が込められている。

繰り返すが、知っているだけではダメなのだ。

それらを何気ない生活の中で生かしていくことが求められるのである。

アイヌ文化であれば、古式舞踊や伝統工芸、食文化などに見られる独特の様式に目が奪われがちだが、そこに底流している精神性にこそ本当の価値がある。

古いものに価値などないと考える人も少なくないが、現代の技術や社会システムは感染症や自然災害などの不安や、高齢過疎化などの社会的な課題を克服できているだろうか。

例えば、縄文から伝わると言われている共生と循環の思想は、今のような社会だからこそ参考にすべきである。

アイヌ民族の精神文化は縄文の基本哲学を今に伝えているとも言われているが、一般にはあまり認知されていない。

こうしたことも、知らなかったでは済まされないと私は思う。

日本社会は大きな転換点を迎えている。私たちが今とこれからを生き抜くために、アイヌであってもなくても、みんなで手を取り合っていかねばならない。

そのためにも、重ねられてきた歴史と向き合い、目の前に横たわっている障害を一つ一つ乗り越えていく必要がある。

明治以来の北海道は目覚ましい発展を遂げてきたと言われているが、

それは先住していたアイヌ民族の方々にしてみれば、開発や強制移住などにより環境や生活そのものを破壊され、祖先から伝えられてきた大切なもの、文化や言葉までを手放さざるを得なかったという、辛く悲しい歴史でもあるのだ。

私たちはこうしたことを学校で教えられてはこなかった。だが、教えられてこなかったから知らなくても良いとか、仕方がないと言うことにはならない。

教えられなくとも、誰でも想像することができる。むしろ想像しない方が不自然である。少しでもいいからアイヌ民族の身になって想像してみるべきである。

今こうしている時にも、すぐ近くにたくさんのアイヌ民族の方々がいる。

今のアイヌ民族は大多数の日本人と同じように生活している。一見して何ら変わりはない。全てが私たちと同じように見える。

だが、アイヌ民族の方が父母や祖父母、そのさらに前の祖先に思いを巡らせた時、どのような気持ちになるだろうか。

それらは非常に複雑で一様ではないが、その時にこみ上げてくる思いは、アイヌ民族の方々だけの問題として簡単に片づけることができるだろうか。

いかに覆い隠そうとしても、辛く悲しい差別が繰り返されてきたのは紛れもない事実である。

アイヌ文化を広く一般に知ってもらうという意味において、私自身もウポポイに期待している。

まずは古式舞踊や伝統工芸、食文化などに注目が集まると思うが、

そこにも厳然と、今も暗く深い谷が存在している。

深い谷があることを、知らないふりをしたりなんとなく無視したりして素通りすべきではない。

本当の意味で手を取り合うためには、歴史を素通りすることなどできないのだ。

殊更に暗い過去を持ち出してせっかくの流れに水を差すつもりはない。

だが、歴史は人々の胸に深く刻まれている。

わだかまりが無かったことにしたくても無くなることはない。胡麻化そうとすればするほど距離は縮まらなくなる。

華やかさに埋め尽くされるようにして暗い過去を通り過ぎようとしても、真の意味で手を取り合うことはできない。むしろ空虚な空気に包まれることになると、私は思う。

画一的な歴史教育などをする必要はない。これからは個人がそれぞれの想像力を働かせて自分自身で学んでいく時代である。

ウポポイもその助けになればと大いに期待している。

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