今、先日に弟子屈町で行われたパヨカカムイエピル(パヨカカムイ=疫病の神 エピル=祓う)について振り返っている。

屈斜路古丹のエカシ(長老)の話によると、

アイヌ民族は、大きな災いをもたらす伝染病に対して、三段構えで考えていたと言う。

第一段階は、

通常のカムイノミ(カムイ=神 ノミ=祈り)を行い、アペフチカムイ(火の神)を通して、たくさんの神々に災いが収まるように祈りを捧げる。

それでも疫病が収まらない場合、

第二段階として、エピル、つまり、パヨカカムイに対して「お祓い」を行うのだと言う。

エピルを行っても鎮まらない時には、

第三段階、最終手段として、コタン(集落)をなげうって、散り散りになって生活することもあると言う。

先日のパヨカカムイエピルは、この第二段階に当たり、人間としての思いをパヨカカムイに直接訴えかけるお祓いの場であった。

だが、エピルが終わってからも、私の中でよくわからないことが一つあった。

エカシはエピルの直前にカムイノミを行っていたのだが、

このカムイノミは、誰に向かって、どのような目的のカムイノミなのかが、いまいちわかっていなかったのだ。

エピルが終わってから、エカシに聞いてみた。

エピルの前に行ったカムイノミは、ヌサコロカムイ(祭壇を司る神)に対してのものであり、

「今までアペフチカムイを通して祈りを捧げてきたが、伝染病は鎮まらない。今からパヨカカムイに直接訴えかけるエピルを行うから、私たち人間が、安全にエピルを行えるよう、災いが降りかかることのないよう、見守っていてください。」

このようなことを、ヌサコロカムイに向かってアイヌ語で語り、祈ったのだと言う。

その後、ヌサコロカムイに守られながら、私たち40人はエピルを行ったのだ。

これを聞いて、全てが腑に落ちた。

私は、このパヨカカムイエピルの前後で空気の流れに変化が起きたように感じていた。

たくさんの神々と共鳴し、渾身の祈りを込めて祓ったことにより、変化が始まったと思っている。

いずれにしても、これからの北海道、日本、世界は変わっていく。

たくさんの人の心の動きが、これからの世界を変えていくのだと思う。