私は、幸運に包まれて生きてきたという実感がある。すべてのことに感謝している。

しかし、

なんの障害もなく楽に歩いてきたわけではない。

常に困難を感じながら、どうにかこうにかしてここまでやってきた。

行けども行けども少しも楽になっていない。

長年にわたる緊張のあまり、心と体がどうしようもなく萎縮しているところがある。

そのせいで思考や行動が限定的になっているという自覚もある。

突然出くわす出来事に、予想できていたことであっても、思わず立ち止まってしまう。金縛りにあったようにすくみあがってしまうこともある。

自分自身が複雑にこんがらがっていて、その場所から簡単には抜け出せない。

しかし、なすすべなく立ちすくんでいるだけではない。

どんな時でも必ず新しい発見がある。

息苦しく、全身傷だらけで、視界不良の苦しみの中でも、その向こう側に微かに見えてくるものがある。

直面する困難な状況がそのまま道標となっていることを感覚的に知っている。

自分の周りのあちこちに小さな火の手が上がり、しだいにその煙が目に突き刺さってくる。

目が痛い。狭くて、熱くて、息苦しくて、とてもそのままそこにはいられなくなる。

だが、完全に八方塞がりになることはない。どんな時でも必ず、確実に進むことのできる小さなスペースが目の前にある。

目を凝らし、不自由な体を少しずつ前に進めていく感じが心地よい。

今の状況を変えていくという、単純ではっきりした目標があるから退屈しない。楽しい。

いつも、難しい局面に置かれることによって道が開かれてきた。

何かに導かれるようにして、向かうべきところに少しずつ向かっていく。

困難だからと言って、うまくいかないということではない。

目の前に現れる現象は、全てその時の自分が乗り越えるべきものであり、

これからもひとつひとつ乗り越えて行くだけのこと。