仕事とプライベートを、オンとオフに上手に切り換えることが成功の条件みたいに言われることが多いが、本当にそうだろうか。

私自身は、オンとオフを都合よく切り換えることはできない。

オンとオフに切り換えるということは、「プライベートを切り離して仕事だけに集中している状態」と、「仕事のことは一切忘れて自分の好きなことだけ考える状態」の2つがあるというのが前提になっているが、どちらの状態も私にはあり得ない。

私の場合、仕事に集中するためにはリラックスして広く全体を見渡し、どんな変化にも柔軟に対処できる状態であることが前提条件になる。そうでなければよい仕事などできない。

そのためにプライベートも含めた全方位アンテナを常に張り巡らせているのだが、肝心な時に何故わざわざアンテナ受信をオフにしないといけないのか。その遮断行為自体に大きな違和感がある。

また、「オフの時は仕事のことを一切忘れて好きなことだけ考える。」というのも不思議な話。仕事と自分のやりたいことをわざわざ切り分けるということに不自然さを感じる。

元々仕事は生活の一部であり、両者を切り離すことなどできない。無理矢理切り離そうとすること自体に無理があり、一見合理的に見えても最終的にはストレスとして跳ね返ってくる。

生活をより豊かなものにするという目的と実感を持って仕事に向かい合うことができていれば、少々激務になったとしてもストレスはさほど感じない。

仕事と生活をわざわざ切り離すことにどんなメリットがあるのだろうか。かえって無用の緊張感やストレスを作り出してはいないだろうか。

オンとオフを切り換えることを強いられる環境では、本当の意味で集中力を引き出すことはできないと思う。

仕事にしても余暇にしても、片目を瞑った状態でいることになり、非常に不誠実な態度だと私は思う。

「オンモードは負荷が大きく、オフモードは負荷が小さい。」と考えるのも明らかにおかしい。

オンモードで消耗しているとしたら、それは仕事に集中しているからではなく、プライベートをわざわざ排除することに疲れているのではないかという疑問が湧いてくる。

オフの時は仕事のことを忘れて力を抜けというのもおかしな話で、オンの状態との落差が鮮明になればなるほど、オンの状態が苦痛に満ちたものであることを強く意識してしまうことになりはしないだろうか。

そもそも、オンとオフを切り換えることが目的なのではない。ストレスと上手く付き合うことを目的としているはずである。

実際にその効果があるかどうかを考えないといけない。

  • 実際にオンとオフを切り替えることはできるのか?
  • 実際にオンとオフを切り替えている人はどれだけいるのか?
  • オンとオフを切り替えることによるデメリットはないのか?
  • オンとオフの切り替えは現実に有効な方法なのか?

こうしたことを常日頃からチェックしていく必要がある。

なんとなく正論に聞こえるからというだけで、実際にはできもしないことを社会的に強制されることほどくだらないことはない。

オンとオフを切り分けたところで実際に何がもたらされるかと言えば、オフからオンに切り換えることが苦痛になることくらいではないか。

結果的に仕事そのものへのモチベーションを下げることになっていないか。

渋々オンに切り換えたところでいい仕事ができるわけがない。

仕事もプライベートも充実させるためには、どちらも好きにならなければいけない。

一秒も犠牲にすることなく、人生全ての時間を大切に楽しめることを目指すべきだ。

仕事はどこまでいっても生活の中にある。切り離すのは無理がある。

業務に私情を挟むとしたら問題になることもあるが、仕事と生活が一体化していること自体が悪いわけではない。

仕事には誠実に取り組む。だが、仕事中だからといって他のことを排除するものではない。

家のことや地域のこと、親や子どものこと等々、限られた時間の中で私たちがやるべきことはたくさんある。

オンとオフをわざわざ切り分けるべきではない。

その瞬間、その瞬間に状況に応じて優先すべき事項に取り組むだけのこと。仕事の合間にプライベートなことをしたとしても何も悪いことなどない。

仕事とプライベートのどちらかを犠牲にするのではなく、同時並行に進めてしっかりと両立させる。私自身、そんな生き方を徹底していくつもりである。