2019年5月に日本遺産に選ばれた「炭鉄港」。空知の炭鉱、室蘭の鉄鋼、小樽の港湾と、これらを結ぶ鉄道の歴史や産業遺産に注目が集まっている。

こうした盛り上がりを一過性のものでは終わらせたくないが、未来の北海道にどのように根づかせていけばよいだろう。
過去を懐かしむ郷愁だけに留まらず、これからの道民の生活とに何かしらの接点を作りたい。
飛躍した話に聞こえるかもしれないが、北海道の歴史はアイヌ民族抜きには語ることができない。あまり知られていないが炭鉄港にもアイヌ民族が大きく関わっていた。
衰退した産業は時間が経てば過去のもの。往時を知る人がいなくなれば無機質な記録が残るだけである。
だが、アイヌ民族は未来の北海道においてもその精神を受け継いでいく。経済が縮小していく北海道において、アイヌ民族の存在感は相対的に大きくなっていくだろう。
炭鉄港に限らず、北海道の歴史と文化を過去のものとして葬り去るのではなく、今とこれからの力にしていこうと思うなら、どこかで必ずアイヌ民族と向き合わなければならないはずだ。
北海道には一部の身勝手な者たちの都合で抹殺されてきた歴史がある。今から掘り起こすのは簡単ではない。だが、そこを直視しないことには、侵略者として乗り込んできた側の居場所はいずれなくなるに違いない。
北海道で生きていくにはどうしてもアイヌ民族の方々と協力し合う必要がある。そのためには想像力を巡らしながら歴史を学び、互いに理解し合うことから始めるしかない。
明治以来、不当な差別が分断を招き互いに生きづらい空気を膨らませてきた。不幸な歴史の流れを変えるべきである。私も諦めないで地道な歩みを重ねていきたい。
歴史を正しく振り返ることによって、今とこれからを明るく温かいものにしていく。その作業は社会的にも大きな意味がある。歴史家にとっても楽しいことだと思うし、炭鉄港はそのチャンスだと思うがどうだろうか。
私も北海道で生きる。アイヌ民族の方々とともに先人からの教えをかみしめ、その精神を私たちの生活に生かし、時空を超えて大切なことを子々孫々に伝えていきたい。